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<画像1>自販機用カプセルに入ったムラサキオカヤドカリ。環境汚染の象徴的光景だが、 実際にはそれほど遭遇する機会は多くはない。(屋久島、2006.9)
オカヤドカリ達の住宅事情
オカヤドカリ類の生息には、海岸から普段の住処となる海岸林への連続性が重要であるらしい事は前項で触れました。
しかし実際に南西諸島を訪れてみると、一見その条件を満たしている様に見える場所でも、全くオカヤドカリがいないという場所に出くわす事があります。
かと思うと、その場所から数kmしか離れていない別の場所では、オカヤドカリ類がうじゃうじゃいるなんて事も。
護岸されているわけでもなく、海岸林も保存されているというのに、この両者の違いは何なのでしょうか?
原因は悪徳業者の乱獲でしょうか?
否。その答えは、どうやらオカヤドカリ達の住宅事情にある様なのです。
ヤドカリは、当然の事ながら自分で殻を作ることはできませんので、適当な大きさの巻貝に入らねばなりません。
多くの個体が見られる場所を見まわしてみると、砂浜に隣接する磯場に、小型のオカヤドカリ類が宿として利用しやすい巻貝(イシダタミ類やレイシガイ類)が多数付着していたり、
島によっては海岸林の中に多くのカタツムリが生息していたりしている事に気付くでしょう。
逆に前者の場所では、一見おなじように見えてもその宿となるべき貝殻があまり見当たらない場合が殆どです。
つまり、そこではヤドカリ達は住もうにも家がないのです。
ところで、洗剤などのプラスチック製のキャップを被ったオカヤドカリの写真<画像1>が、ゴミ問題の象徴というような形で紹介されているのを何度か見た事がありますが、
それもその1例ではないでしょうか。
また<画像2>は、オカヤドカリ類がほとんど見られなかった浜で見つけた1個体ですが、この様な”使いづらい宿”を選択しなければならなかった事からしても、厳しい住宅事情が伺えます。
こういう光景を目にすると、オカヤドカリ達にとっては、たとえ洗剤のキャップであっても”あるだけマシ”なのかも知れないと思えてくるから不思議です。
ちなみに、洗剤のキャップなど選択するのはほとんどがムラサキオカヤドカリで、これはムラサキの殻選択の嗜好性がかなり影響していると思われます。

<画像2>見るからに不便そう。この浜には殆ど巻貝の殻は落ちていなかった。(石垣島、2004.12)
小型のオカヤドカリ類でもそのような状況ですから、大型の個体での宿捜しは、彼らにとってはかなり問題なのではないでしょうか。
特にオオナキオカヤドカリやオカヤドカリなど、より内陸に進出する種類ではより深刻であろう事は想像に難くありません。
この問題に関連して、もう1つ重要となっていると思われるのが南西諸島や小笠原におけるアフリカマイマイ<画像3>の存在です。
この陸貝は、害獣として知られた帰化種であり、沖縄島や奄美大島で多く見られる大型のカタツムリですが、
オカヤドカリやムラサキオカヤドカリ等の、比較的大型になるオカヤドカリ類が好んで利用しているようです。
特大サイズのオカヤドカリが入れる巻貝といえば、他にはチョウセンサザエくらいしかなく、陸上で巻貝の殻を見つける事の困難さから推測すると、
この貝の存在の大きさがわかります。
事実、この貝の生息する島ではその利用率は非常に高く、生息しない島と比べると明らかに大型のオカヤドカリ類の個体数も多いと思われます。(※1
ちなみに、このアフリカマイマイの殻は、オカヤドカリ類のみならず、河口域で多く見られるツメナガヨコバサミ等の水棲ヤドカリも利用する事を確認しています。
在来の生態系にとって悪しき存在のハズであるこの外来カタツムリが、ヤドカリ達にとっては好都合だとは何とも皮肉な話です。
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