オカヤドカリの見分け方




成長と色彩変化

我々がオカヤドカリ達と出会うとき、常にサザエに入ったような大きな成体とばかり出会うわけではありません。
むしろ、それよりも小さな個体、時には上陸後間もないような小さな個体との出会いもあるかもしれません。
そこまででなくとも、ショップの店頭に並ぶオカヤドカリ達の殆どは、アマオブネなどの小型の巻貝で充分収まるサイズです。
そんな小さめサイズのオカヤドカリ達の中には、実は大人とはちょっと違った色をしている場合があります。
その変化を知ることで、同定が容易になる可能性が大いにあります。
ここでは、成長と共に変化していく色彩についてちょっと考えてみましょう。


■基本は関節から先へ
まずは、北マリアナ諸島産サキシマオカヤドカリの成長段階による色彩変化の例<画像17>を見てみましょう。
色の濃度、体色が変化するサイズなどに多少の個体差はありますが、このサキシマオカヤドカリは比較的色調の個体間変異は少ない種で、 上陸後暫くは白っぽかった稚ヤドカリが、概ねこのような過程で色変わりをして、皆様ご存知のあの鮮紅色になっていきます。
ここで留意すべき点は、変色が脚部各節の中枢側(根元の方)から起こり、成長と共に次第に末梢側(先の方)へと広がっていくという点です。
これは、程度の差はありますが、多くのオカヤドカリ類に共通する特徴です。
このルールを押えておくと、成体との違いに戸惑う必要がなくなります。
またサキシマオカヤドカリでは、初めは茶褐色だったリング状の色帯が、やがて鮮紅色へと変化していきます。
この色の変化は種によって異なり、ナキオカヤドカリの様に非常に多くの色彩バリエーションを持ったものもいますし、 あまり変化しない種もいます。
また紹介したサキシマオカヤドカリでも、ここで掲載したのは日本に比較的近い地域に生息する個体群ですが、 他地域の個体群ではより小さなサイズで色彩変化が起こるものや、色調自体が若干異なる個体群も存在するようです。


オオナキオカヤドカリ

<画像17>サキシマオカヤドカリの色彩変化
指輪状の赤斑部分が成長に伴い徐々に拡大していく。
(いづれも北マリアナ諸島産)

■困難な若齢個体の同定
ほとんどの場合、今まで挙げたような様々な要素を合わせて考えていけば種まで落としていけると思います。
しかし、前ページでも触れたように、ナキオカヤドカリとムラサキオカヤドカリでの非越年個体<画像18>では同定が非常に困難な場合があります。
というのも、小さいサイズでのこの2種の形態は非常に酷似しており、本来ナキオカヤドカリに見られる眼柄下側の暗色斑もはっきりしない事が多いのです。
この暗色斑は定着(上陸後)1〜2年目の個体ではじめて出現する(※1とされており、 定着直後の個体を飼育し、ある程度成長し暗色斑が出現したところで同定を行う(※1,(※2,(※3のが一番確実な方法で、 これにより誤同定が判明したという報告(※4,(※5もありますが、 無許可での野生個体の採集・飼育は違法行為であり、一般観察者がこれを行うのは難しいところです。
定着後、数回の脱皮後の個体であれば、ムラサキオカヤドカリはナキオカヤドカリと比べて全体的に体型がマッチョで、 ずんぐりむっくりしているとの報告(※2もありますが、観察者の熟練度の問題、比較対象がない場合の単独での指標としてはやや難しいかもしれません。
微小個体での同定の必要性は定着個体の種間比率等を知る上でも重要ですが、 そのような理由で、残念ながら未だ微小個体では両種の判別は困難でありお手上げとなる場合があるのが現状です。


オカヤドカリ

<画像18>観察者の頭を悩ませる定着直後の個体。でも、長旅ご苦労様。
(紀伊半島海岸、2006.9月)

■色彩変化の種類別特徴
各オカヤドカリ種別の成長による色彩変化の特徴と傾向を簡単に纏めてみました。
ただ、これは暫定的に制作したものですのでバリエーションの多い種では例外的な個体も存在するかもしれません。
また、色彩変化のサイズの目安などは、今後検討の余地があります。


<表1>オカヤドカリ類の色彩変化
ナキオカヤドカリ
Coenobita rugosus
カラーパターンには個体差が非常に大きく、脱皮毎に色調が変化する事も珍しくない様だが、
全体としては成長とともに脚部の色ムラは小さくなり、灰〜褐色系の単一色に近付く個体が多いとみられる。
眼柄下側の暗色斑は、上陸後1〜2年で出る(※1とされているが、
それ以前の段階でのムラサキオカヤドカリとの同定は非常に困難。
ムラサキオカヤドカリ
Coenobita purpureus
初めは一様に淡色だが、着色してくる時期には個体差が非常に大きい。
幼ヤドカリではクリーム色〜褐色〜青紫色と様々だが、成長と共に発色が濃くなる個体が多い。
オカヤドカリ
Coenobita cavipes
褐色を基調とする脚部色は成体よりやや濃い程度だが、
幼ヤドカリでは各節末梢側が淡色となる。
眼柄は成体は全体的に暗色となるが、幼ヤドカリでは下縁のみが黒い。。
コムラサキオカヤドカリ
Coenobita violascens
成体は濃紫色だが、幼ヤドカリの脚部はオレンジ〜朱色で各節末梢側のみ淡色を呈する事が多い。<画像19>
オレンジ色で左鋏脚に斜向顆粒列がない小さめのオカヤドカリがいたら、ほぼ本種とみて間違いない。
眼柄は成体は全体的に暗色となるが、幼ヤドカリでは下縁のみが黒い。
オオナキオカヤドカリ
Coenobita brevimanus
比較的早い段階で褐色1色となる。
幼ヤドカリの段階では比較的個体間の色調差は少ないが、 成長するに従いパープル〜暗赤色の鮮やかな色彩となる。
鋏脚先端は白くなるものもあるが個体差が大きい。
サキシマオカヤドカリ
Coenobita perlatus
幼ヤドカリは白〜ピンクを基調とし、各節中枢側に褐色の輪状斑を持つ。
やがて輪状斑が鮮紅色に変化し末梢側に拡大し、成体では全身鮮紅色となる。
幼ヤドカリでは複眼の色素が薄い。
オオトゲオカヤドカリ
Coenobita spinosus
幼ヤドカリは全身茶褐色で比較的色ムラは少ない。
成長すると赤みが加わり赤黒褐色となる。

オカヤドカリ

<画像19>コムラサキの若い個体はこのようなオレンジ色。
(西表島海岸、2005.10月)

<参考及び引用文献,web site>
(※1:池田久和・今福道夫,1987.白浜におけるオカヤドカリの越冬. 南紀生物, 29(2):84-88
(※2:「本州無効分散オカヤドカリの種類について」in ”Decapod Journal ”decapod report Vol.0http://decapod.or.tv/index.html
(※3:2007.「小さくても強いのだ!」in”みーばい亭”みーばい亭のヤドカリ話4 http://www6.ocn.ne.jp/~mi-bai/
(※4:池田久和・今福道夫,1985.白浜でナキオカヤドカリ採集. 南紀生物, 27:112.
(※5:今福道夫・池田久和,1987.紀州産オカヤドカリ類について. 南紀生物, 29(2):81-83.









次へ

甲殻類の部屋に戻る


[PR]就職、仕事にも県民性が出る?:無料カンタン占いで日払いもアップ