カニさんトンネルin沖縄




オカヤドカリ

<画像1>これがカニさんトンネル。(沖縄島、2005.12月)

冬のカニさんトンネル

”カニさんトンネル”と聞いて、「あ〜、あそこの事か」と思った方も多いと思います。
特に沖縄でドライブなんかした事のある方は通った事があるんじゃないでしょうか?
そう。沖縄本島やんばる地区にあるあそこの事です。
詳しい概要はリンク先(※1をご覧いただくとして、 オカガニ等のロードキル対策の為に平成8年に設置されたというこの施設、オカヤドカリ類もやってくると聞き、平成17年の年末、冬ではありましたが沖縄行きの際にちょっと時間があったので立ち寄ってみました。
実は以前から何回も通りがかってはいたのですが、ちょっと人工的な臭いがあんまり好きではなかったので素通りしていたんですね。
周辺の様子(画像2)を早速眺めてみると、海岸と森の間が道路とコンクリート壁で完全に遮断されており、海を覗くとテトラポットで砂浜などは全くなし。

「うわぁ、キビシイ。これは絶対轢かれる。」

これが素直な感想でした。
その堤防の下に、森と海を繋ぐ細いトンネルが掘ってあり、誘導路のようなコンクリ板も付けてある(画像1)のですが、 正直言って、こんな細いところをオカヤドカリやオカガニが見つけられるんだろうかと疑問に思いました。
とりあえず、辺りにはオカヤドカリ類の姿はなかったので、さらに周辺の森の中を捜してみました。
季節が冬とはいえ、他の場所ではムラサキオカヤドカリやナキオカヤドカリはある程度活動していたので いるなら見つかると思ったのですが、残念ながらこの時は1頭も姿を見る事はありませんでした。
これでは、このトンネルが役に立っているのかどうかどころか、オカヤドカリ類が本当にいるのかすらもわからず、夏に来島した時には必ず寄ってみようと心に決めつつ、 この時は沖縄を後にしました。


<画像2>海側の様子。
(沖縄島、2005.12月)


<画像3>設置されている看板。
(沖縄島、2005.12月)





再びトンネルへ

オカヤドカリ

<画像4>でました。第一オカヤドカリ確認。
(沖縄島、2006.8月)

その機会は、翌年の夏にやってきました。
平成18年の8月末、再び来島する用があり、大潮の満潮を期して当然気になっていたあのトンネルにも行ってみる事にしました。
8月末ということで、オカガニは時期的に期待できませんが、オカヤドカリ類ならばきっとまだ放幼があるはずです。
夜8時過ぎ、現地に到着。車のドアを開けると、もうそこには1頭目オカヤドカリの姿が<画像4>
アフリカマイマイを背負った大物でした。
早速トンネルのまわりを捜します。
うじゃうじゃというほどではありませんが、5〜60頭のオカヤドカリ類がいました。
種類を確認してみると、ほとんどがオカヤドカリで、お腹いっぱいに抱卵している個体も結構いて、 この辺りに放仔が目的でやってきている事は間違いなさそうです。
トンネルの入口まで行き、中を覗くとそこにもオカヤドカリの姿がありました<画像5>
思ったより利用している事がわかったので、今度は道路を渡って海側を見てみる事にしました。
上の道路は夜間は交通量は多くはないものの、幹線道路で車はかなり飛ばした状態で通るので人間でも横断は気を付けなければなりません。
道路上には、山側と違って全くオカヤドカリの姿はありませんでした。
他の島などでも感じた事ですが、オカガニやベンケイガニと比べて、 生息数の割にはオカヤドカリは道路上に出てくる個体は少ないような気がします。
道路脇に密生する場所の横を車で通過しても気付かない事もありました。
この時も道路脇のコンクリート上には多数の個体がいました。
もしかするとオカヤドカリはコンクリートは気にしないがアスファルト舗装は嫌いなのかもしれません。
ただ、盛期には数が多いので横断する個体も少なからずいる事は想像できますが。
さて、道路を横断して海側を覗きこみます。この日は割と海は穏やかな方でしたが、 それでもここは外洋に面しているので結構波立っていました。
前述したように、ここはテトラポットが並んでいて、トンネルの開口部はテトラポット群の根元の方の護岸にあり、 上から眺めても何も見えないので、降りてみることにしました。
夜のテトラポットは足を滑らすと危ないので、慎重に降りていきます。
テトラポットと護岸の間の僅かな陸地部分には、何十頭かのオカヤドカリが既に到着していました。
こんな草も生えていないような場所にオカヤドカリが来る目的は、放仔以外には考えられません。
そのまま暫く待つ事にしました。
しかし、オカヤドカリ達は護岸にそってうろうろするばかりでそう簡単には海に浸かる個体はいません。
様子を伺っているようです。
その上海岸だというのに、やっぱり蚊が待っている僕を悩ませます。
もしかしてこれもトンネルを通って来てるのか? とか考えながら待つこと小一時間。やっと1頭が海に入りました。
脚を踏ん張り殻を揺らしています<画像6>。 しかし、しばらく待っても放仔をしたのはこの1頭だけでした。
中には海岸まで出たものの、放仔せずトンネルを引き返す個体もいて、なかなか慎重である事を伺わせました。


<画像5>トンネル入口より海側を望む
(沖縄島、2006.8月)


<画像6>放仔を始めたオカヤドカリ
(沖縄島、2006.8月)

生息比率と環境

トンネル周辺では、沖縄を代表するオカヤドカリ類3種<画像7〜9>が見られましたが、 その生息比率には特徴がありました。
見られるオカヤドカリ類の9割以上はオカヤドカリで、 ムラサキオカヤドカリは数頭、ナキオカヤドカリに至っては1頭のみという状態でした。
しかも、オカヤドカリ、ムラサキオカヤドカリ共にほとんどが大型の個体で、通常海岸近くで見られるような上陸2年以内の小型の個体はほとんど皆無の状態でした。
これは、この場所が森と海岸の寸断によって、その狭間を生活場所とするナキオカヤドカリやムラサキオカヤドカリにとっては生息に適さない場所になっている事を意味していると考えられます。
その上で内陸傾向の強い森林生活者のオカヤドカリだけは、なんとか生活できているといった印象でした。
今回、オカヤドカリ達はある程度このトンネルを利用しているという事がわかりました。
設置者側の公開情報では、オカガニにおいてはかなり轢死率が低下しているとのデータもあります(※1
そういった意味では、このような試みは一定の成果を挙げていると考えられます。
しかし、上述した通りこういった施設を作ったとしても、これで全て解決というわけではなく、 海岸性オカヤドカリ類にとっては依然として住み難い環境である事に違いはないようです。
また、このようなテトラポットと護岸がある限りは、幼生の上陸、つまり再生産には厳しい環境である事も問題として挙げられます。
だからといって、護岸を全て取っ払うなどはできない相談でしょう。
人間生活の利便性や安全確保との兼ね合いは、やはりここでも難しい問題だと思います。
ただ、このような取り組みは続けていって欲しいと思いますし、 自己満足に陥らない為には、前述したオカガニの経年的変化ような調査をし、結果を客観的に評価し次にフィードバックしつつ生かして行く事が最も重要だと思います。



トンネル周辺でみられたオカヤドカリ類


<画像7>オカヤドカリ
(沖縄島、2006.8月)


<画像8>ムラサキオカヤドカリ
(沖縄島、2006.8月)


<画像9>ナキオカヤドカリ
(沖縄島、2006.8月)









<参考サイト>
(※1 ”やんばるロードネット” http://www.dc.ogb.go.jp/hokkoku/works/eco/kani.html










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